
近年、一戸建て住宅における断熱・防音性能のニーズが高まるなか「トリプルサッシ」を採用する家庭が増えています。従来のペアガラスよりも性能が高く、冷暖房効率や快適性の向上が期待されることから、注目を集めている窓構造です。そこで今回は、トリプルサッシの特徴やメリット、導入時の注意点について詳しく紹介します。
トリプルサッシの特徴
トリプルサッシは、その名の通り3枚のガラスを使用して構成される窓サッシのことを指します。一般的な住宅で多く採用されてきた単板ガラスや、2枚のガラスで構成されるペアガラスと比較して、格段に高い性能を持つのが最大の特徴です。この高性能を実現しているのは、単にガラスの枚数が多いからというだけではありません。その構造には、断熱性や気密性を極限まで高めるための工夫が凝らされているのです。
まず、3枚のガラスの間には、それぞれ「中空層」と呼ばれる空間が2層設けられています。この中空層には、乾燥した空気が封入されているのが一般的ですが、より高性能な製品では、空気よりも熱伝導率が低いアルゴンガスやクリプトンガスが封入されています。
これらの不活性ガスは、室内外の熱の移動を効果的に抑制するため、外気の温度が室内に伝わりにくく、また室内の快適な温度が外へ逃げ出すのを防ぐ効果が高いです。これにより窓全体の断熱性能が飛躍的に向上します。
近年では、省エネ基準の厳格化やZEH志向の高まりを受けて、新築住宅の段階からトリプルサッシを選択するケースが増加しています。とくに寒冷地では、冬場の室温保持や結露対策として有効な選択肢となりつつあります。
トリプルサッシのメリット
トリプルサッシを導入することで得られる恩恵は多岐にわたります。断熱性能
最大のメリットは圧倒的な断熱性能にあります。夏は厳しい日差しによる熱の侵入を大幅にカットし、冬は室内の暖気を外に逃がさないため、一年を通して冷暖房の効率が格段に向上します。これは、月々の光熱費を削減することに直結するため、経済的なメリットは大きいといえるでしょう。防音性能
次に挙げられるメリットは、高い気密性によってもたらされる優れた防音性です。トリプルサッシは、その複雑な構造と精度の高いフレームによって、外部からの音の侵入を効果的に防ぎます。幹線道路沿いや線路の近くなど、騒音が気になる立地の住宅であっても、室内では静かな環境を保つことが可能です。これは、外からの騒音だけでなく、室内の生活音が外に漏れるのを防ぐ効果もあります。小さな子どもがいる家庭や、楽器の演奏、映画鑑賞などを趣味にしている人にとっては、周囲に気兼ねなく生活できるという大きな安心感につながるでしょう。
結露防止
さらに、結露の発生を強力に抑制できる点も、日本の気候において重要なメリットです。結露は、室内外の温度差によって窓ガラスの表面温度が露点を下回ることで発生します。しかし、断熱性が極めて高いトリプルサッシは、外がどれだけ寒くても室内側のガラス表面温度が下がりにくいため、結露がほとんど発生しません。結露を放置すると、カビやダニの温床となり、アレルギーや喘息といった健康被害を引き起こす原因となります。
また、水分がカーテンや壁、床などを傷め、住宅の寿命を縮めることにもなりかねません。トリプルサッシは、こうした結露にまつわる様々な悩みから解放してくれる、健康面でも建物の維持管理の面でも有効な選択肢といえるでしょう。
トリプルガラス採用時の注意点
トリプルサッシは高性能である一方、導入にはいくつかの注意点も存在します。コストが高い
まず第一に、コスト面です。ペアガラスと比べて製造コストや施工コストが高くなる傾向があり、住宅全体に導入する場合はまとまった予算が必要になります。しかし、初期費用はかかっても、光熱費の削減効果や住宅の長寿命化を考慮すると、長期的には費用対効果が高いといえるケースも少なくありません。窓自体の重量がある
また、窓自体の重量が増すため、窓枠や建具への負担も考慮する必要がある点にも注意が必要です。とくにリフォームでの導入を検討している場合、既存のサッシや壁の強度によっては対応できないケースもあるため、事前に専門業者による調査や設計確認をすることをおすすめします。選べる種類が少ない
そして、意外と見落とされがちなのが、選べる種類が少ないという点です。ペアガラスのサッシに比べると、トリプルサッシはまだ普及段階にあるため、選択できるガラスの種類やフレームデザイン、サイズのバリエーションが限られている場合があります。とくに、窓のサイズや開閉方式、色味などにこだわりたい人にとっては、選択肢の少なさが悩みの種になるかもしれません。